こんにちは、お菓子歴16年・プロ歴6年目のるいです。
クッキー作りでこんなお悩みありませんか?
「レシピによってバターの状態が違うけど、どれが正解?」
「レンジで溶かしてしまったバターは使える?」
よく見るクッキーのレシピには
・バターを室温に戻して柔らかくするもの
・冷たく固い状態から作るもの
・溶かしバターから作るもの
がありますが、どれが美味しいレシピなのか悩みますよね。バターの状態によって適した作り方も変わってきます。
ではどれが一番正しいのか?
結果からいうとすべて正解です!
クッキーはどの状態のバターから作ることが出来るからです。ただ、仕上がりに差が生まれるので「見た目」「味」「食感」「作りやすさ」の4点を詳しく解説していきます♪
この記事を読めば…
- レシピ選びが楽しくなる
- オリジナルレシピを作るヒントになる
- 自分好みのクッキーを発見できる
注意)実験の結果は全て私の主観的な感想です。データに基づく科学的根拠はありませんので批判・反論はご遠慮ください。
焼き比べや実験が好きな人にはこれもおすすめです!
*この記事はプロモーションを含みます。
アイスボックスクッキー「バターの使いかた」を変えた焼き比べ
今回使用するレシピ
今回は小嶋ルミ先生の「おいしいクッキーの混ぜ方」から「アイスボックスクッキー」のレシピを拝借、参考にしました。材料の分量・成形・焼成は全て同じでバターの状態と作り方だけ変えました。
この本はタイトルの通り「混ぜ方」へのこだわりや基礎知識が詰まっています。このマニアックな焼き比べが好きな人にはぜひ一度手に取っていただきたい一冊です。
焼き比べラインナップ
今回は上記にもある通りバターの状態・作り方違いの焼き比べです。
話を進めるためにちょっとだけ専門用語が出てくるのでラインナップと一緒に見ていきましょう。
柔らかいバターで作る「クレメ法」
1つ目は一番有名な「バターを室温に戻して柔らかくする」方法です。ここに砂糖を加えて泡立て、卵、小麦粉を加えて作ることを製菓用語で「クレメ法」といいます(泡立てないこともあります)。バターがクリーム状であることからこう呼ばれます。
この方法の特徴はバターの特性である「クリーミング性」が存分に発揮できることです。クリーミング生徒はクリーム状のバターを泡立てることで空気を抱きかかえる性質のことです。よくレシピに出てくる「バターに砂糖を加え白っぽくなるまで混ぜる」のはクリーミング性を使ってサクサクの食感を作るためです。
固すぎても柔らかすぎてもこの性質は出すことが出来ません。クレメ法の特権といえるでしょう。
中には泡立てない方がいい、とするレシピもありますが今回はルミ先生が泡立てていること、実験の分かりやすさを重視する目的で泡立てています。
冷たいバターで作る「サブラージュ法」
2つ目は冷蔵庫から出した冷たいバターを粉類とすり合わせて砂状に、そこに卵を合わせる方法を「サブラージュ法」といいます。フランス語で砂という意味のサブル(sable)から来ている言葉でサブレ生地は原則この方法で作られています。フードプロセッサーで作る方法はこれに分類されることが多いです。
サブラージュ法は小麦粉と冷たいバターを先に合わせることが特徴でこれによって必要以上にグルテンが形成されるのを防ぐことが出来ます。長くなるので省きますがサクサク食感に必要な「可塑性」と「ショートニング性」が発揮できる条件も整っているため、理論上一番さっくりと仕上がるといえるでしょう。
溶かしバターで作る方法
3つ目は溶かしバターに砂糖、卵、小麦粉を順番に加え練り合わせる方法です。この方法は名前がついていないようです。溶かしバターからクッキーを作る方法はプロの現場やレシピ本であまり使われないことが原因かもしれません。
話を進めるために、ここでは「溶かしバター法」と名づけることにします。
溶かしバター法の特徴は簡単に作れることです。バターを柔らかくしようとレンジにかけたら溶けてしまった!なんてトラブルにも対応できます。
ただ、バターは一度溶けると元には戻りません。上記の「クリーミング性」「可塑性」「ショートニング性」は失われた状態です。
焼き比べ:見た目
焼く前
焼く前の見た目がこちらです。
3種類とも色が違ってクレメ法だけ長いです。
色が違うのはバターの状態が違うためです。溶かしバターは黄色く、クレメ法は白っぽくなるまで泡立てているので出来上がった生地にも影響します。
同じ配合、同じ分量、同じ直径で作ったにも関わらずクレメ法の物は他より1㎝ほど長くなりました。このことからクレメ法には空気がしっかり抱き込まれていることが分かりますね。
さて、こんなに見た目の違う3種類が焼いたらどう変わるのか見ていきましょう。
焼きあがり
ほとんど差が内容に見えますがよーく見ると違いがあります。
綺麗な丸に仕上がっているのはクレメ法、サブラージュ法です。溶かしバター法は少しいびつに丸が歪んでいます。
輪郭がシャープで角が綺麗に出たのはクレメ法で作ったものでした。サブラージュ法と溶かしバター法は角はあるものの少し流れてしまった印象があります。
焼成中、オーブンの中では溶かしバター法→サブラージュ法→クレメ法の順に生地が熱で緩み広がっていきました。一番早く広がった溶かしバター法はくっきりとした丸い形と角を維持できなかったと考えられます。
クレメ法…丸い形、角ともに綺麗に残った
サブラージュ法…丸い形は綺麗に残ったが角はいまいち
溶かしバター法…少しいびつな丸になった、角は一番出なかった
焼き比べ:味
結果的にどれも美味しく出来上がりました。材料が同じだけあって味はほとんど変わりません。
一つ気になったのは溶かしバター法です。他の2つに比べて油っぽく感じました。
これはバターを完全に溶かしたことによって乳化しづらくなったのが原因です。溶かしバター法はバター中の水分を小麦粉が吸いまとまりがいいのですが、その分油分が浮いてしまいます。これが焼き上がりの油っぽさに繋がります。
とはいえあまり気にしない!という方であれば同じように美味しくいただけるでしょう。
焼き比べ:食感
今回の焼き比べで一番差が出たのは食感でした。
クレメ法…サクサクしていて歯触りがいい
サブラージュ法…サク、ホロ、とほどける食感
溶かしバター法…ザクッとしっかりした食感
クレメ法の断面を見ると小さな気泡を抱き込んでいるのが分かります。サクサクとした歯触りが心地よく噛むことが出来ます。
サブラージュ法の断面はきゅっと詰まっています。サクッとしつつホロっとくずれる食感を楽しむことが出来ます。ほどけるような崩れ方はグルテンが少ないからだと言えます。
溶かしバター法の断面はサブラージュ法とよく似ていますが食感は別物です。ザクッとした固めの食感が好きな人にはおすすめです。溶かしバターはクッキーをサクサクさせる性質がなくなった状態なので他の物より固く仕上がります。
食感に良し悪しはなく、求めている食感・食べるときの状況によって作り方を変えてもいいことが分かりました。
もちろんレシピによって製法が同じでも食感は変わってくるので一度レシピ通りに作ってからの改良をおすすめします。
焼き比べ:作りやすさ
レシピ選びでは作りやすさも重要なポイントになってきますよね。今回試した方法で作りやすさランキングを作るならこうなります。
1位:溶かしバター法
2位:サブラージュ法(フードプロセッサー)
3位:クレメ法
圧倒的1位は溶かしバター法です。溶かしたバターに砂糖、卵、小麦粉の順に加えて練るだけなので計量が終わっていれば5分もかからずにできてしまいます。何より、室温に戻すのが面倒くさい!という人や間違えてバターを溶かしてしまった…というときに便利な作り方です。
2位はフードプロセッサーを使ったサブラージュ法です。粉を振るう必要がなく、バターも冷蔵庫から出したてでいいのが魅力です。フードプロセッサーを使うことで粉が舞って汚れが広がるのも防ぐことが出来ます。手作業でもできますがおすすめはフードプロセッサーです。
3位はクレメ法です。まずバターを室温に戻す、という点を面倒だと思う人が多いようです。その上、泡立てることや、使える状態まで寝かせる時間が長いなど手間がかかります。それでも慣れてしまえば簡単です。時間に余裕をもって計画的に作る人は問題ありません。
まとめ
今回の焼き比べではどのバターの状態・作り方でもクッキーは出来上がるということが分かりました。
ただ、細かな差が仕上がりに出てくるので以下のことを覚えておきましょう。
柔らかいバターで作るクレメ法…サクサクに仕上がり形や角が綺麗にでる。
冷たいバターで作るサブラージュ法…ホロっと崩れるような食感が楽しめ、フードプロセッサーを使うことで簡単に出来上がる。
溶かしバターで作る方法…誰でも簡単に作ることが出来てザクザクとした食感に仕上がるが少し油っぽさが残る。
個人的にはこれまでフードプロセッサーを使ったサブラージュ法でばかり作っていましたがクレメ法のサクサク感がとても美味しかったので、これからはクレメ法も使っていきたいと思いました。
この焼き比べがレシピ選びや改良のヒントになれば嬉しいです。他にもリクエストありましたらツイッターやインスタグラムのDMにお声がけください!
最後に私のおすすめフードプロセッサーを載せておきます。こちらは家庭用サイズです。
少し重いですが、ガラス製の容器なので色移り・におい移りがなく我が家でも週2以上稼動している品物です↓